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「双子」✕「ビスケット」✕「鍋」
私は双子だ。
そっくりの妹が居るらしいが、10年前に父親の経営する鍋の飲食店が倒産して多額の借金を背負い、妹は親類に養女に出された。
借金の半分の金額で妹は売られてしまった。
その親類も経営に失敗してから行方不明になった。
妹は二十五歳になっている。
私は、ずっと探していたが見つからなかった。
私は体調を崩して、しばらく入院する事になった。
ある日に医師から告げられた。
ガンが進行しているから摘出手術を受けるように言われて、私は承諾した。
そして手術室に入り全身麻酔をかけられた。
不思議な事に私は死んでいないのに肉体から魂が抜け出した、幽体離脱だ。
フワフワと宙に浮いている。
それに自由に動ける、下には私の肉体が有る。
「お姉ちゃん」
誰か声をかけてきた。
振り向くと私と同じ顔の女が居た。
妹のサチだ。
「サチ、死んだのか?」
「違う、私は隣の手術室に居るの」
何と同じ病気で入院していて同じ時間に手術を浮けたのだ。
「不思議ね」
二人は麻酔が覚めるまで、いろんな話をした。
世の中には、こんな不思議な事もあるんだ。
私が目を覚まして、動けるようになると妹を探した。
妹の大好物のビスケットを売店で買った。
エレベーターで偶然にも妹にばったり会った。
妹も、手にビスケットを持っていた。
そして二人は抱き合い涙を流して再開を喜んだ。
二人とも手術はうまく行き、経過も良好だ。
妹とは、一緒に旅行に行く約束をした。
退院日も同じ日だった。
「これからは、いっぱい会おうね」
「うん」
私たちは仲良しの双子になった。
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