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ひな祭り×綿雪
私には妹が居る。
私は兄になるのだが、妹が苦手だった。
優しくて、周りの人は親切にする妹。
私は、父親からバカ扱いされていた。
11才になっても、人見知りで誰とも話さない。
でも、妹は兄ちゃんと呼び慕って来る。
貧乏な我が家は雛人形を買えなかった。
私は妹が不憫になり、村を周りボロ切れを集めて来た。
昨夜から降った雪は30センチは積もり、朝に雪ダルマをたくさん作った。
板切れを集めて、雛壇を作り雪ダルマを並べた。
そしてボロ切れを雪ダルマに着せて雛人形に見立てた。
完成した時に妹がやって来た。
「お兄ちゃん、何を作っているの?」
「お雛様だよ」
「凄い、綿雪で作ったんだね、可愛いお雛様」
妹は嬉しくて、ずっと笑顔でお雛様を見つめていた。
「私は本物のお雛様を見たこと無いけど、綺麗だね」
「うん、お雛様作って良かったよ」
そこに父親がやって来た。
「なんだ、これは」
叫ぶなり雛壇を叩き壊した。
「お父ちゃん、やめて」
妹が父親の、足に抱きついた。
「俺に金が無くて雛を買えないからイヤミだろうが」
「ちがう、ちがう」
妹は泣きじゃくり、壊れた雪ダルマを握り泣き崩れた。
ふんっ
父親は家に入った。
「また、作ってやるからな、泣くな」
「お兄ちゃん、ありがとう、生まれて初めてひな祭りをしたよ」
妹は、私に抱きつき泣いていた。
その年に病弱な妹は亡くなった。
翌年、私は約束通り妹の墓の前に雛壇と雪ダルマのお雛様を作った。
その夜に、妹の墓に行くと、小さな子供の足跡がたくさんついていた。
きっと妹が喜びはしゃいだ足跡だと思ったら、後から後から涙が溢れた。
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