「新緑」×「カラス」

1/1
前へ
/11ページ
次へ

「新緑」×「カラス」

新緑は生命力に溢れていて眩しさを感じる。 目が覚めて周りを見渡すと、木々の芽があちこちに出ている。 俺とえらい違いだ。 高校を卒業してから、いろんな仕事やバイトを経験したが、今は何もやる気になれない。 河原に寝転び空を見上げる。 青空に点のようなものが見える。 だんだんと大きくなる。 何かが、こちらに向かい落ちてくる。 黒いカラスだ。 そして、俺の胸に着地した。 カアカアと鳴いた。 「うるさいよ」 しばらくするとカラスが話した。 「うるさいよ」 じいちゃんに聞いた事が有る、カラスは九官鳥みたいに言葉を覚えるらしい。 「カラスは良いな、働かなくて良いから」 ずっと話しかけていたが、急にバカバカしくなり、俺は歩き出した。 カラスは肩に止まる。 「あっちに行け」 「お前たちの言葉は理解した、金儲けをさせてやろうか」 こ、こいつ、話せるのか。 「私は神様から遣わされた八咫烏だ、足が三本有るだろ」 確かに足が三本有る。 「これは八咫烏様でしたか、ご無礼致しました」 「良い良い」 八咫烏様は、それから宝くじを的中させたり、徳川埋蔵金のありかを見つけた。 今では俺は有名人になった。 もちろん大金持ちになった。 広大な屋敷の敷地に八咫烏様の神社を立てた。 賽銭箱を置き、おみくじやら、御守りを売り出す。 八咫烏饅頭とかも置いた。 巫女はガールズグループを卒業した女の子を49人揃えた。 「では、そろそろ、お前に役目を伝える」 ははー 「間も無く巨大地震が日本を襲う、生き残る方法は巨大な船を作り選ばれた人々を乗せる、タンカーと貨物船には一年分の食料や農作物の種を積み込む」 「えっ」 「これが乗船名簿だ」 「それから、いろんな動物のオスとメスを乗せる」 「お待ちください、それはノアの箱船じゃ無いですか、人類は滅ぶのですか」 「そうだ、巨大船を作るのだ」 「そうなんですね、それで滅亡の日は?」 「一月後だ」 「一月で出きるのですか」 「知らぬ」 八咫烏様は大空に向かい飛び去った。 「俺が話しても誰も信じないだろうな」 俺は大型客船を買い身内や知り合い、巫女を乗せた。 その日に客船は太平洋に乗り出した。 やがて前方に千メートルは有る巨大津波が見えた。 あんなの来たら助からないよな。 俺は巫女の仲良しの子と抱き合った。 そして人類は滅亡した。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加