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「新緑」×「カラス」
新緑は生命力に溢れていて眩しさを感じる。
目が覚めて周りを見渡すと、木々の芽があちこちに出ている。
俺とえらい違いだ。
高校を卒業してから、いろんな仕事やバイトを経験したが、今は何もやる気になれない。
河原に寝転び空を見上げる。
青空に点のようなものが見える。
だんだんと大きくなる。
何かが、こちらに向かい落ちてくる。
黒いカラスだ。
そして、俺の胸に着地した。
カアカアと鳴いた。
「うるさいよ」
しばらくするとカラスが話した。
「うるさいよ」
じいちゃんに聞いた事が有る、カラスは九官鳥みたいに言葉を覚えるらしい。
「カラスは良いな、働かなくて良いから」
ずっと話しかけていたが、急にバカバカしくなり、俺は歩き出した。
カラスは肩に止まる。
「あっちに行け」
「お前たちの言葉は理解した、金儲けをさせてやろうか」
こ、こいつ、話せるのか。
「私は神様から遣わされた八咫烏だ、足が三本有るだろ」
確かに足が三本有る。
「これは八咫烏様でしたか、ご無礼致しました」
「良い良い」
八咫烏様は、それから宝くじを的中させたり、徳川埋蔵金のありかを見つけた。
今では俺は有名人になった。
もちろん大金持ちになった。
広大な屋敷の敷地に八咫烏様の神社を立てた。
賽銭箱を置き、おみくじやら、御守りを売り出す。
八咫烏饅頭とかも置いた。
巫女はガールズグループを卒業した女の子を49人揃えた。
「では、そろそろ、お前に役目を伝える」
ははー
「間も無く巨大地震が日本を襲う、生き残る方法は巨大な船を作り選ばれた人々を乗せる、タンカーと貨物船には一年分の食料や農作物の種を積み込む」
「えっ」
「これが乗船名簿だ」
「それから、いろんな動物のオスとメスを乗せる」
「お待ちください、それはノアの箱船じゃ無いですか、人類は滅ぶのですか」
「そうだ、巨大船を作るのだ」
「そうなんですね、それで滅亡の日は?」
「一月後だ」
「一月で出きるのですか」
「知らぬ」
八咫烏様は大空に向かい飛び去った。
「俺が話しても誰も信じないだろうな」
俺は大型客船を買い身内や知り合い、巫女を乗せた。
その日に客船は太平洋に乗り出した。
やがて前方に千メートルは有る巨大津波が見えた。
あんなの来たら助からないよな。
俺は巫女の仲良しの子と抱き合った。
そして人類は滅亡した。
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