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これまで生きてきて、これほどまでに“生”に対して執着することはなかった。泣きながら女は死にたくないと何度も叫んだ。けれどその声は誰にも届かない。
その人は、さっきまで女の膝に突き立てていたナイフの切先を人差し指でなぞるように触りながら、「さてとー。どう殺してあげようかなー」なんて歌いながら、ベッドの足元を右へ左へと歩き回っていた。
どうしてこんな目に______。
「心臓にこのナイフを突き刺そうか______」
まだまだやりたいことがあるのに______。
「それとも腹に突き刺して、そのまま腑を切り裂いてやろうか______」
好きな人ができて、結婚だってしたいのに______。
「もしくはこのままずっと切り刻んで、出血多量にして殺そうか______」
お父さんやお母さんにもまだまだ親孝行できてないのに______。
「あ、そうだ。首をスパンと切って殺してあげよう______」
やだやだやだやだ______。
「それじゃ、じゃあね______」
その人が握るナイフの刃は、女の首にめり込んで、スパンと切られた。血飛沫は白いシーツに飛び散り、女は苦しみながら、目の前が真っ暗になっていくのを感じていた。
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