繋がらない被害者たち

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「それはコスプレですよ、警部」 「コスプレ?」 薫は菊村に説明する。 「アニメとか漫画の人気キャラクターの格好することをコスプレっていうんですよ。たぶんこの人、コスプレイヤーなんじゃないかな?昨日、札舞ドームで“コミケ”やってたから」 おじさん警部の菊村には何のことやらチンプンカンプンであった。目が点になって、彼の思考は完全に停止してしまっている。そんな彼に薫は説明を続けた。 「コミックマーケット。略して“コミケ”。いわゆる、同人誌即売会のことですよ。そこによくコスプレイヤーたちが集まってきて、写真撮影会とかをするんです。こういう衣装とかって、大体コスプレイヤーが自作してるんですよ」 薫はその死体をまじまじと眺めて言った。 そんなことより彼女はよく知っている______。菊村はその点について少々気になったが、事件に関係ないからと、それを聞くことをやめた。 「じゃあ、その、“コミケ”ってのが近くであって、この被害者もそれに参加していたってことか?」 「はい、たぶんですけど」 菊村はすぐに部下の刑事を呼び、最近開かれたコミケで被害者を見た人はいないかを聞き込みしろと指示を出した。「はい!」とその部下の刑事は答えて、その一室を後にした。そして再び菊村と薫はその亡骸を注視した。そんな二人に話しかけたのは、鑑識課の鑑識官、久米次郎であった。彼もまた菊村や薫と同じようにその亡骸を見ながら、「まったくひどいもんだよ______」と言ったのである。 「見ての通り、ロープで縛り上げて身動きを取れなくして、鋭利な刃物で体中を切り刻み、終いには首の頸動脈をスパンッと切られて御臨終といったところだろうね。死因は失血死。凶器は、ベッドの横に落ちていたナイフですよ」
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