屋根裏の筋ト霊

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 この家は呪われていると私は考えた。  ここは死んだ祖母とその友人が建てた山奥の別荘。  外に出るのが億劫過ぎて物書きになった『私』が二年前に引き取ったものだ。  二階建てのロッジ風。冷暖房もネット環境もあって宅配便もちゃんと届く。  夏は涼しく冬も大して寒くない快適な場所。  騒音も人間も対して無い、理想的な環境。故に筆は何時にも増して走り、読者の心を掴む良作を作れていた。(これは自画自賛ではなく発行部数と編集さんの言だ)  だからこそ、違和感は目立つ。  それはとある初夏の深夜。私の代表作、『探偵楽団シリーズ』の『最終楽章』を書き終えた時の事だった。  ガタン!  上から物凄く大きな物音が聞こえた。  体が硬直する。勿論、上から聞こえて来た音が死体でも落ちた様な大きな音だから驚いたのだが、それ以上にここは二階(・・)だ。  この上に階はない。一体何が、何処から落ちたのか?  その時は自分に言い聞かせた。『幻聴だ』と。  実際翌日屋根上を見たが何もなかった。  それはとある秋の明け方。何かが擦れる様な、羽音の様な音で目が覚めた。  聞こえたのは勿論、二階の上。  日が昇って屋根上を確認しても何もない。  気のせい……とは思えない。二階の上、そして屋根上ではない場所に、何かがある。  探すとそれは呆気無く見つかった。  祖母の仕事部屋。その天井に屋根裏部屋に続く入り口はあった。  この二年、一切足を踏み入れていなかった場所に足を踏み入れる。床には埃一つなく、空気も澱んでいない。が、熱い!熱気が凄まじい。  隠された屋根裏にはダンベルとバーベル、その他筋トレグッズが屋根裏に所狭しと置かれていた。  その中に、奴は居た。  薄暗い屋根裏に映える血よりも赤い肌、光り輝くつぶらな瞳、円錐状の高い鼻、そして……  「ヴァァアアルク!」  それはゴリゴリに鍛えられた筋肉だった。  「おっと、よく来たな、メリッサの孫。」  喋った、赤い筋肉が!  「祖母を、知っているのですか?」  「あぁ、アイツとは幾つも冒険した仲だ。」  筋肉を見せながら話す様は異様だった。  「……筋肉、凄いですね。」  「だろう?で、お前()か?」  「()?」  「冒険だよ。メリッサは幾つも世界を冒険して一緒に世界を救ったが、お前もやるのか?」  「………一緒に来てくれますか?」  「勿論だ。」  奇妙だったが、首を突っ込みたくなった。  仕事の取材、という事で自分を納得させたが、好奇心が勝った。  「さて、じゃぁ行こうか!いざサルデア世界へ!」  「…流石にアウトでは?」
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