一話

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一話

ふと、目が覚めた。 電気はついていないのに、不思議と明るい。 ゆっくり体を起こすと、その光の正体がわかった。 「鏡・・・・・・?」 部屋の真ん中に、大きな鏡があった。表面が明るく光っていて、水の揺れのような動きがある。 置いた覚えはない。 ゆっくり手を伸ばす。なぜだかそうしないといけない気がした。 右手の半分が鏡の中に入る。意識に靄がかかる。 体の半分が鏡の中に入る。存在に靄がかかる。 体のすべてが鏡に入る。 ――俺の存在が、消えた。
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