案ずるより住むが易し

離れて暮らすのは、もう不自然じゃないか

　私は即答しきれず、プチパニ状態に陥った。

　一つの町に、幼稚園ｘ１・小学校ｘ２・中学校ｘ１という時代を経て、自転車で１５分の公立高校、車で１０分の就職先と……手の届く範囲でしか行動していなかった私が、家を……町を出るだなんて考えてもいなかったからだ。

　え、アパートで暮らすというのはどういうこと？

　子供の頃から……なんとなく結婚して、そちらの家で一緒に暮らして、家族を増やして、親の面倒見て──こんな人生を送るものだと思っていたのに、同棲スタートだと？

　ご飯は作れるけど生活能力ないし。
　資金はいくらかかるの？
　だいたいどうやって借りるの？
　おばあちゃんのご飯は誰が作るの？
　私は大丈夫なの？

　ふいに訪れた幸せの提案を、私は余分な思考で頭をこねくり回すばかりだった。