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母一人、子一人
彼は大きな市に住み、市営団地で母子二人暮らしの生活だった。
つまりは私と正反対の中に彼はいた。
そんな私達が出会い惹かれ合ったのだから、出会えた偶然は、もはや必然としか思えないと私は感じている。
同じ町でも、同じ学校でも、同じ職場でもない、全く知らない者同士が出会う確率たるや……。
アパートに向かう前、団地に立ち寄り「ちょっと待ってて」という彼を私は駐車場で待っていた。
私が長く待った彼の様子は、薄く弱い笑みを浮かべていて、
「すごく泣かれた」
そう言うと、車を走らせた。
彼と、彼の母親の間にある計り知れない諸々は、正直私には分からない。
だけど、
『この彼を生涯かけて守り抜こう』
私の誓いが立った瞬間だった。
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