第十三章 君と千日の夏 三

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「私達は何も産まないかもしれない。だけど、二人で多くの人の未来を造りましょう」  武智は、真兵と生きてゆく事を望む。 「恋は夏の日のようなものです。それは、永遠ではありません」  真兵は、恋は一時的な日常で、それが永遠ではないと告げる。 「君と夏を過ごせたら本望です。夏で死ぬ虫に後悔があると思いますか?」  懸命に生きたならば、後悔など無い。虫は恋の為に産まれ、そして恋をして、恋を残して死ぬ。 「俺達は虫けらですね……」 「それ以上の恋はありません」  二人は茶室の庭で、虫を眺めていた。その虫はコウロギで、夏の終わりを告げていた。しかし、二人の恋は、やっとスタート地点で、そっと唇を寄せあった。 「しかし、塩家。どうして、乃里の日記?を台本のように読む?…………」 「そっちもノッて続きを読んでいるだろう?」  感情を込めて塩家が読むので、つられてしまった。しかし、ここからが凄い。  二人はやっと結ばれるのかと思ったが、土壇場で真兵は怖くなって逃げる。それを追いかけて、桜の木の下で抱き合う。 「武智は、桜の木ごと真兵を抱き込んだ。そして、深く唇を重ねる。そして、そのままズボンを降ろすと、太い幹のような反り返ったソレを、奥の小さな蕾にツプリと添え当てた」  それは、標本にされる虫のようであった。 「読むな!!!!ここから、エロ展開だろう!!」  それは、病院の離れ。そこには満開の桜が咲いていた。その桜も交尾しているのだと、武智が呟く。夜の空を埋め尽くすかのような、薄くぼんやりとしたピンク、それは、皆で交尾をしているのだ。  そして、真兵は桜の木に押さえ込まれ、爪先立ちになる。そして、その微かなつま先も宙に浮き、ゆっくりと武智が中心にやってくる。それは、差し込まれるといったものではなく、突き抜かれる痛みだった。  真兵の呻き声が、満開の桜に染みるように溶けてゆく。そして、ズップリと埋め込まれ、そのまま静かに止まった。 「まあ、初めてでは、こんなものだな。上手く緩められないから、痛くて仕方がない。でも、力が抜けない」 「経験が無いからな…………しかし、季節感がゼロだな、先程、コオロギが鳴いて、夏の終わりだったぞ。どうして、ここで満開の桜になってしまう???????」  そこは、フィクションだからと言いかけたが、そこがポイントだった。  真兵は、その後、じっくりと拡げられ、中で回され、注挿が始まる。まるで夜に蛙が鳴いているかのように、ウエ、ウガ、ウゴとうめき声をあげ、やがて真兵は、最奥に武智を埋め込まれた。
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