68人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………まだ残っている。でも、ここから通える範囲だから大丈夫」
瀧澤は大丈夫だと言っているが、塩家が調べてみると、ここから車で二時間ほど離れた場所だった。
「これからホテルに戻るのも大変でしょうから、泊まってゆきますか?」
しかし、この家にゲストルームというものはない。
「いいの?」
「塩家と一緒の部屋でいいですか?」
俺の部屋には、布団がないので、和室に止まる方がいいだろう。
「…………………………」
「水瀬、俺と一緒にすると、ヤルよ」
塩家は、困ったように首を振っているが、これから二時間かけてホテルに戻るのは大変だろう。
「このリビングに泊めてくれればいいよ」
「わかりました」
では、瀧澤が食をしている間に、布団を用意しておこう。
「水瀬……………………」
俺が布団を運んでいると、溜息をつきつつ、塩家が手伝ってくれた。
「水瀬、子供じゃないのだからさ…………」
「俺は子供の頃の記憶が無い。そこに、重要な事が隠されている気がする」
俺も、瀧澤の好意は気付いている。でも、進展するには、過去と向き合う事が必要になってきている感じがする。それは、竜宮城ではないが、浦島太郎の子孫を見て悟った。
竜の一族が人間になると、かなり瀧澤に似ている。でも、瀧澤は人間で、竜ではない。
「竜が人間になったら、瀧澤さんに激似しているような気がする」
「竜って、コイツ???」
竜も布団を背に乗せて運んでいる。しかし、何度も落としては、俺を巻き込む。何も俺の上に布団を落さなくてもいいと思うのだが、何故か落とすのだ。だから俺は、仕方なく、何度も竜の背に布団を戻す。
「そう。コイツとか言うな。竜は水竜で最強の存在だぞ」
「竜とはヤッた事がないからな…………比べようがないな…………」
何でも、相手と寝て確認しないで欲しい。
そして同様に、満里子の中に残っている、嵐竜と塩竜も、瀧澤に似ている感じがしている。
「満里子に残った、嵐竜と塩竜の記憶も、俺は失っている。どうして、記憶が失われたのだろう………………」
「…………どうして、なのだろうな」
最初のコメントを投稿しよう!