第十三章 君と千日の夏 三

8/9
前へ
/164ページ
次へ
 ここで、又、振り出しに戻ると、瀧澤に惹かれているのか、竜を懐かしく思っているのか、自分でも分からないのだ。 「竜が、どうして俺と一緒にいるのか。それも、忘れてしまっている…………」 「竜王を得た竜は、最強なのだろう…………」  しかし、元々、水竜である竜は最強だ。  布団をリビングに運び込むと、食事を終えた瀧澤が、自分で敷いていた。 「少し、布団が小さいですか?」 「いや、大丈夫だよ」  瀧澤は、丁寧に布団を敷くと、皿も自分で洗っていた。そして、何故か乃里の千の物語を、片手に持って読みだした。 「水瀬君、お風呂に入ってくるといいよ。私は、シャワーを浴びてきたから」 「そうですか。では、行ってきます」  そして、風呂から出てリビングに行くと、塩家と瀧澤が、真剣に議論していた。 「この物語は、乃里さんの恋愛なのですか?」 「そうだと思うのですが…………」  しかし、乃里は自分の事は書いていない。  だが、それは千話目という約束だったので、変ではないだろう。すると、百五十三話にある、小さな女の子の物語も気になると、二人で盛り上がっていた。 「どんな物語ですか?」 「ヤバイ話しだよ。とある金持ちが、自分の憧れの女性と同じ人間を作ろうとする」  その女性に縁がある子供を引き取り、本人になるように育ててゆく。そして、成長した時に、悲劇が起きる。 「少女は同じように男を振り、男は逆上して少女を殺す」  憧れの女性も、男性を振ったのだ。 「そして、同じように隠す」 「同じように????」  オチとしては、そこには既に幾体もの死体がある。そして、奥底には憧れの女性だった死体が埋まっている。 「ホラーですね」 「実際に発生しているのかもね」  そして、瀧澤は武智と真兵の物語も読み、唸っていた。 「ここだけ、性描写がやたらとリアルだよね。それに、筆跡も少し違っている。もしかして、ここは真兵さんが書いたのではないのかな?」 「乃里に真実を伝えたのですか…………」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加