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第十四章 君と千日の夏 四
瀧澤は、かなり疲れているようで、ウトウトとしていたが、俺と塩家の話しを必死に聞いてくれた。
「武智も影武者だったとする」
「だから、変質していった」
木々と愛し合うという事が、湾曲して残っているのだ。
「でも、そんな事が、普通の人に出来るのかな…………」
まず、普通の人は、影武者の発想がない。それに、入れ替わる必要もない。
「…………黒澤さんの影武者は、界違いの存在だと言っていたでしょう…………だから、影武者ではなく、界違いの本人という事も在り得ます」
瀧澤はさらりと、怖い事を言ってきた。すると、武智は界違いの自分と入れ替わり、どこかの界で生きているという事になる。
「そもそも竜も、見えない人と、見える人がいる。きっと、竜も界の異なる種族なのです。だから、見える人は、僅かにここの界と、層がズレている」
この層には、上下があり、上にズレると光を感じ、下にズレると闇を感じるらしい。
「竜が界違い……………………」
「でも、竜王や私は、この界の存在です。竜も、この界に生きている。だから、界を繋げられる」
その界に存在する同種のお陰で、竜はこの界に存在できるという。
「水瀬君は、オーロラのようです。空に輝いていて、光と闇が混じり合い、輝きを増す」
そして、黒澤はこの界違いを利用し、自分の界というものを、構成しようとしているという。
「自分の界というのは、自分が神になる世界というものでしょうか?」
「それは、分からない。でも、自分の界に生命を生み出そうとしている」
人工の肉体、人工の魂を作り、試しているのは、生命を作り出す為だという。
「そして、黒澤さんは、とても怖い方です。この界においても、神と呼んでもいい」
表面上は美容師だが、整えてカットしているのは、運命だという。
「黒澤さんは、この界で子供を作りましたが、それはこの界の子供で、異界で生きられる能力はなかった」
「能力????????」
異界で生きるには、能力が必要らしい。すると、どうして真兵と武智には、千の物語に書かれている未来があるのだろう。
「そうです。真兵さんと、武智さん。どうして異界で生きているのか…………黒澤さんは、知りたがっている」
「それは簡単ですよ。入れ替わったのは、魂だけで、肉体ではないからです」
それは、見ていると分かる。武智は、異界の肉体では無かった。
「あ、それでゆくと、真兵さんも同じなのかな?????」
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