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洋麺屋 陽洋は駅から歩ける場所にある、一軒屋のレストランだ。その場所は、オフィス街を抜けた先にあり、スーツ姿の会社員も多く行き交う。少し駅に近付けば、建物も高層ビルになっていた。
しかし陽洋は、道路を渡ったら公園という立地の為か、森の中という雰囲気になっている。そして、建物は木製で、ハイジの家とも呼ばれていた。
「水瀬の手料理!!」
「手料理ってさ、俺、ここのコックだからな…………」
陽洋は、女性に人気で、ディナーはキャンセル待ちまで一杯になっていた。そして、一年先まで予約で一杯になっている。
しかし、モーニングとランチは予約が要らない。価格もリーズナブルで、毎日でも食べられる設定になっている。だから、営業終了時点で、完売に近いのだ。
「それと、ランチに間に合うように来い!!」
「ゴメン…………仕事がさ、終わらなくてさ……朝食も抜いていたから……美味しいものが食べたくて」、
だが、賄い用に余った材料をまとめてある。それに試したい料理もあった。たいしたものは出来ないが、今日はこれで勘弁して貰おう。
「はい、本日の賄い料理。マグロのカルパッチョに桜エビのパスタ。両方試作品だから、感想を頼む」
「了解!!いただきます!!」
いつもならば、ランチ営業が終ると、陽洋はディナーの時間まで閉店となっているので、とても静かだ。その間に、俺は賄い料理を食べ、家に帰る。
しかし、今日は呼んでもいないのに、学生時代の友人が来て、一緒に賄い料理を食べていた。
「それで、倉繁、何か用か?」
倉繁は高校時代の友人で、今は区役所に勤務している。その区役所は隣の駅にあるのだが、ここまで自転車ならば十分とかからない。だから、よく倉繁はランチにも来ていた。
しかし、ランチの時間は俺が忙しいので、手を上げて挨拶するだけで、会話は出来ない。
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