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「水瀬、腹減った…………」
「食べているでしょう!」
俺は、自分の分として、サラダとパンを残しておいた。特にサラダは、山盛りで用意していた。
「そのパン、少し頂戴」
「ダメ」
このパンは、余りではなく俺用なのだ。仕入をしているパン屋に頼んで、全粒粉で美味しい食パンを焼いて貰っている。そして持ち帰って、明日の朝食でも食べるのだ。
「少しだけでいいから、お願い!!」
「少しだけ!!」
そして、渋々出すと、全部食べられてしまった。
「美味しい!!!!」
「倉繁…………………………」
すると倉繁は、近所のパン屋に電話して、食パンの取り置きを頼んでいた。
「水瀬の食べ物は、兎に角、何でも美味しいからな!!」
「野々村…………………………」
野々村も、俺の分の賄いが少ないと分かると、近くの中華料理店に弁当を注文していた。
この二人、頭が良いだけでなく、とても仕事が出来るのだ。
「全く…………」
倉繁と野々村に出会ったきっかけは、文化祭の屋台で、俺が調理しているのを見た二人が、釣った魚を持ってきた事だ。俺は当たり前に調理し、皆で食べた。
すると、二人はいたく感動していた。
二人は実家から高校に通っていたが、釣った魚を持ち帰ると、母親に嫌がられていたらしい。二人の母親は、切り身の魚ならば食べるが、丸ごとの調理をする事が無かったという。
そこで俺が、魚を切り身にしてやっていたら、すっかり友人と認められてしまったようだ。
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