68人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は祥太郎のように、魂がはっきりと見えているわけではないが、感覚的には分かっている。
佐々木の魂は柔軟で、相手の魂を包み込む。それは、見えないハグのような感じだった。
「…………こういう魂の人もいるのか…………」
包み込んで温かい。そういう魂の形があったのだと、初めて知った。
「多分、遺伝だろうな。佐々木の一族に、羊のような人がいたのだろう」
「羊????」
羊のような人というのは分からないが、俺の魂は水のようだと、祥太郎が言っていた。すると、綿もあっていいのかもしれない。
「ほとんどの人の魂は、石か?だから、人は宝石に惹かれるのかも。それが、美しい魂の形だから」
塩家の解釈も、一理あるような気がしてきた。俺が宝石に興味がないのは、それは魂が石ではないからなのかもしれない。
「でもさ、もう一つの解釈がある。魂は望みに近くなる」
「佐々木さん本人、もしくは先祖が、包み込むような柔らかい魂を欲したという事か?」
包み込むような魂を欲する。どんな、状況だったのかさっぱり分からないが、今、目の前にある魂は人を癒している。
「水瀬も、人を包み込むような優しさが必要だな。今は、溺死させそうな勢いで流れているけどさ……」
「竜は浄化も意味する」
何だか言ってみると、自分が水洗トイレになった気分になった。
「でも、佐々木さんは、占い師もやっていると聞いたけれど、占う必要がないな……相手が、自分で回答を見つけてゆく」
「まあ、客のほうも誰かに言いたいだけなのだろう」
説明している内に、自分の状況が客観的に見えてくるというのもある。
佐々木を観察していると、知らない女性がやってきて、俺達にアイスを分けてくれた。
「箱で買ったけれど、こんなに要らないから、食べてね」
「ありがとうございます」
俺がアイスを食べていると、今度は煎餅がやってきた。
「近所で売っているのよ。おいしいよ」
「ありがとうございます」
この煎餅はとてもおいしい。後で、売っている店を聞いておこう。
「佐々木さんは、父親が占い師だ」
「速水 真兵は、母親が占い師……同業者だったのならば、知り合いかも」
すると、佐々木と真兵が知り合いという事も在り得る。
最初のコメントを投稿しよう!