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「ロマンスとかが、あったとか…………」
「役者同士での恋愛はある。でも、役者として憧れる存在、尊敬出来る先輩。仕事の出来る役者。それと、恋愛との差が分からなくなる」
やはり、尊敬は必要だろう。でも、役者として尊敬できても、人間として尊敬できるのかは分からない。
「水瀬にとって、吉見さんはどうだ?」
「ロマンスというよりも、良きアドバイサー。客観的に見ている人がいると、自分が見えてくる」
きっと、吉見にとって俺は、祥太郎の延長線だろう。
「塩家の数いる恋人の中に、恋愛中の相手はいるの?」
「…………トゲのある言い方だな。恋人というよりも、セフレだから。セフレは恋愛ではない。ただの友達」
ただの友達だから、複数人と寝ても、責めるような事はしないらしい。そして、様々な情報交換をしていた。
「恋愛か………………」
「大恋愛って何だ????」
大恋愛というものが存在するならば、本人に聞いてみたい。案外、大恋愛というのは、些細な日常にあるものかもしれないと、時々思う。
「大恋愛というものは、存在するのかな?」
「何だ、それ?」
恋愛が分からないのに、そこに大がついたら余計に分からなくなる。
俺が頭を抱えると、前に塩味の煎餅が出された。
「?」
「近くの煎餅屋。この店を右に出て、三百メートルくらい先の、左側にあります」
そんなに近所にあるのならば、帰りに買って帰ろう。
「でも、売り切ると店が閉まるのですよ」
「え??」
煎餅にも、売り切れがあるのだろうか。ならば、急いで買いに行かなくてはいけない。
「本日は、もう売り切れましたよ。それで、私が買い置きしているものがありますので、食べてください」
煎餅を差し出した手を遡ってゆくと、そこに佐々木が立っていた。佐々木を見ていると、まるでウサギか、ハムスターに触れているようで、心が和んでくる。これが、真綿に包まれたような優しさなのだろう。
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