第十一章 君と千日の夏

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 悪い占いは、当たらない事に意味がある。だが、外れたとされてしまうのだ。でも真兵は、それでもいいと、最近は割り切っていたという。 「真兵は、女の子と出会ったと言いました。その子が好きならば、ウチの妹はいいよと回答していたので、それはそれでいいのです……でも、ある時、急に連絡が取れなくなった」  それは、本当に突然だったという。  真兵から、佐々木の娘、茶菜に服を持ってゆくと連絡があったらしい。何でも、出会った女の子から、服は沢山購入したが、着られないまま残り、捨てられないと相談されたという。そこで、茶菜の写真を見せ、似合う服か確認すると、絶対に似合うと言うので、少し買い取ったらしい。 「その女の子は、津森 乃里さんですね?」 「そうです。入退院の多い子で、真兵は突き放せずにいました。瞬間でも目を離すと、急変する未来がある子と言っていました」   その急変スピードに、真兵は驚愕してしまったらしい。そして、未来を知るという、恐ろしさを、痛感したと佐々木に告げた。 「真兵は、乃里さんに生きていて欲しかった……ただ、それだけを望んでいた」  それは、恋というよりも、純粋な願いだったらしい。 「真兵から電話があった日、他の薬局にヘルプで行っていて……それがイベントで、とても混んでいて、帰れそうになかった。だから、電話を掛け直すと言ったのです」  だが、それから電話が掛からなくなった。 「…………もう、一年くらい経つのでしょうか……真兵がどこにもいないのです」  真兵は家にも帰っていないし、友人にも連絡を取っていなかった。 「真兵の会社では、失踪の状況から、事件に巻き込まれたのだと言っていました。そして、まだ籍を残しています。警察も事故と事件の両方から調べていると言っていました」  しかし、重要な点はそこではなかった。 「私も、真兵の居場所が全く分かりません。生きているのかも、分かりません」  佐々木の父親も占ってみたが、未来が分からないと言ったらしい。 「そこで、最初に戻ります。真兵は失踪する前に言っていたのです。自分がもし、いなくなる事があったら、きっと……竜が探してやってくる。竜が来たら、伝えて欲しい」  佐々木は、竜に伝言を頼んでいたらしい。 「何か伝えたい事があったのですか…………」  しかし、佐々木は別の事を説明し始めた。 「肉体は三つ、魂は一つを三つに分けた。そうやって、人という可能性が出てきた。人は知らない事を知っている。それは、別れた魂があるから……」  そして、満里子の場合は、肉体の一つが死んだが魂が残り、残りの肉体と魂が、探しているという。
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