第十一章 君と千日の夏

8/8
前へ
/164ページ
次へ
「真兵は、自分の事は占わなかった。死が出てしまった場合、死の暗示がかかるからだと言っていました。乃里さんの未来は、あまりに変動が激しくて、どれが未来として確定するのか分からないと言っていました」  だから、佐々木が真兵と乃里の未来を占ったという。 「私の場合は、相手の本当の言葉を引き出すだけで、ほぼ未来が分かりません。でも、真兵は乃里さんを想っていた。それが妹のような存在でも、心の中にしっかり在った」  そして、真兵は自分が黒澤に捕まるのはダメだと言った。 「真兵は、自分は人類を救おうとは思わない。でも、目の前にいる人が、消えてゆくのには耐えられないと言っていました」  真兵は、やはり黒澤の未来を見たのだ。 「黒澤さんの実験が、思うだけで結果が分かるようになる……」 「黒澤さんは、怖い人だ」  そして、真兵は消えてしまった。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加