第十ニ章 君と千日の夏 二

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 佐々木が乃里の居場所を突き止め、病院に会いに行くと、眠ったままだったという。しかも、佐々木にも魂が見えなかった。 「そして、乃里さんには…………魂が無かった」  乃里を癒そうにも、肝心の魂が無かった。 「乃里さん、目覚めたそうですよ」 「………………!!!!会いに行ってみます!!」  そして、俺の質問も佐々木に聞いてみた。 「どうして、真兵さんは竜に伝言したのでしょうか?」 「それは、多分ですが、竜も黒澤さんを怖がっているからではないでしょうか?理由を言わなくても、理解してくれる相手なのでしょう」  確かに、黒澤から逃げていると聞いて、納得してしまった。 「黒澤さんは、何なのでしょう…………」 「私にも分かりません」  黒澤は、敵かと思えば、助けてくれる時もある。しかも、満里子を預かって、生かしてくれている。 「水瀬さんは、自分の事は不思議に思わないのですね」 「ただの人間ですから」  何の変哲もない、ただの人間に、何の不思議があるのだろう。 「でも、話せて良かった。真兵を見つけるヒントにはなりませんでしたが……竜も真兵を探していると分かった」  しかし、こっちの状況は悪くなった。  真兵が黒澤から逃げているとすると、乃里の記憶を探す事が、得策なのか分からなくなった。 「ありがとうございます。こちらも、大きなヒントになりました」  しかし、乃里が目覚めたが、魂が違っているとは言い出せない。  俺は佐々木と握手すると、薬局を後にした。 「しかし、この煎餅は美味しいな……」 「食べながら歩くな!」  ここで分かった事は多い。  まず、真兵の占いが本物だと分かった。そして、黒澤がその能力を欲している。 「黒澤さんが、真兵さんの能力を得ると、実験しなくても結果を知る事ができる」 「…………それは、怖いな…………」  黒澤が何をしようとしているのかも、俺にはさっぱり分からない。 「家に帰って、時系列順にまとめるか…………」 「そうだな、何だか、分からなくなってきたからな…………」
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