第十ニ章 君と千日の夏 二

3/8
前へ
/164ページ
次へ
 佐々木の魂の謎も残るが、自分の目で確認してみると、人間なのだと分かった。しかし、魂が植物寄りになっている。 「…………佐々木さんも不思議な人だな」 「佐々木さんの魂は………………植物は人を癒す。その能力を取り込んだのか????」  すると、人の魂は進化できるという事だ。 「まあ、家に帰ろう」  電車に乗り込み、煎餅を食べていると、塩家もつられて食べ始めていた。すると、車内に煎餅の匂いがたちこめ、前に座っていた男性の腹が鳴っていた。 「どうぞ」  前に座っていた男性にも、煎餅を勧めると、御礼にガムを貰ってしまった。 「美味しいですね」 「駅前に売っているらしいですよ。今日は売り切れになってしまいました。これは貰ったものです」  そして、乗り込んできた学生にも煎餅を分けると、今度はチョコを貰ってしまった。 「そのチョコも美味しいですよ。大学の売店にあって、他の店では見た事がありません」 「そうそう、だから、売店にチョコが並ぶと、争奪戦になります」  どこの大学生なのか分からないが、言葉使いが柔和で、とても穏やかな雰囲気であった。そこで、動画で有名な、乃里の事を聞いてみると、知っていた。 「彼女が、よく曲を聴いて泣いていました」 「そう!それで、泣くのに、何故また聴くのかと、不思議になった!」  すると、泣く為に聴くのだと怒られたらしい。女性は時々辛い気持ちになり、それを泣く事で解消するという。そして、様々な嫌な事や悲しい事を思い出すが、泣くとスッキリするらしい。 「女性は永遠の謎だ」 「神秘的過ぎて、異次元!!」  しかし、自分とは異なる部分が、面白い時も多いらしい。 「あ、でも水瀬さん」 「どうして、俺の名前を知っているの?」  すると、塩家は祠堂という役者なのだと、瞬間で分かったという。そして、俺も役者なのかと見ていたら、どこかで見憶えがあると感じたらしい。 「陽洋、美味しいです!」 「いつか、ディナーを食べたいです!」  二人の学生は、陽洋がお洒落なのに、頼むと大盛りを出してくれると、感動していた。 「小さなサービス、大きな喜び!」 「大盛りが嬉しいです!」
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加