遡上する鮭

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 自前のエプロンまで持ってきてくれて、なんて準備がいいんだろう。僕のリクエストは目玉焼きとウインナー。自分でも作ることができるけれど、やっぱりアミに作ってもらう朝食は格別だ。  「トースト?ご飯?」  「ご飯」  「へー、パンじゃないんだー」  アミは冷凍庫からストックしたご飯をレンジで解凍する。その間にプライパンに油を引いて、卵を割って、ウインナーを焼いて。  奥さんだったらこんな感じだろうなと、新婚生活を妄想しながら、僕は出来立てのおかずに醤油をたっぷりかけた。  「えっ、醤油?」  「おいしいよ?」  「マヨネーズでしょ。そんなに醤油をかけたら、全部醤油味だよ」  「そんなことないって。アミの愛情が入っているもん」  「あっそ」  アミはお湯を沸かしてコーヒーを入れてくれた。  「アミも飲めばいいのに」  「私、アツアツのコーヒーが苦手だって言ったじゃん。猫舌だし」  「そうなの?じゃあ、牛乳飲む?」  「いらない。白湯もらうね」  「へー。女優さんみたい」  「からかわないでよ。お腹弱いから、朝は牛乳飲まないの」  向かい合って座るアミは、コップに入れたお湯に息を吹きかける。僕は、先ほどキスした唇から目を離せなかった。  「エッチ」  「うわっ」  アミに見つめられていたことすら、気付かなかった。
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