14人が本棚に入れています
本棚に追加
自前のエプロンまで持ってきてくれて、なんて準備がいいんだろう。僕のリクエストは目玉焼きとウインナー。自分でも作ることができるけれど、やっぱりアミに作ってもらう朝食は格別だ。
「トースト?ご飯?」
「ご飯」
「へー、パンじゃないんだー」
アミは冷凍庫からストックしたご飯をレンジで解凍する。その間にプライパンに油を引いて、卵を割って、ウインナーを焼いて。
奥さんだったらこんな感じだろうなと、新婚生活を妄想しながら、僕は出来立てのおかずに醤油をたっぷりかけた。
「えっ、醤油?」
「おいしいよ?」
「マヨネーズでしょ。そんなに醤油をかけたら、全部醤油味だよ」
「そんなことないって。アミの愛情が入っているもん」
「あっそ」
アミはお湯を沸かしてコーヒーを入れてくれた。
「アミも飲めばいいのに」
「私、アツアツのコーヒーが苦手だって言ったじゃん。猫舌だし」
「そうなの?じゃあ、牛乳飲む?」
「いらない。白湯もらうね」
「へー。女優さんみたい」
「からかわないでよ。お腹弱いから、朝は牛乳飲まないの」
向かい合って座るアミは、コップに入れたお湯に息を吹きかける。僕は、先ほどキスした唇から目を離せなかった。
「エッチ」
「うわっ」
アミに見つめられていたことすら、気付かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!