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「じゃあ、食器も片付け終えたし、行こっか」
僕が洗った茶碗をアミが拭く。二人で台所に並んで、二倍のスピードで片付け終えた。
「どこに行くの?」
アミの期待している顔が好き。いつでも対応できるように、僕はリサーチを怠らない。
「映画館なんてどう?涼しいし」
六駅先の大型ショッピングモール。時間通りにバスが来て、僕たちは二人用の席に座る。僕の肩に頭を乗せるアミは、スーッと眠りについた。今日の映画は、女子に人気がある恋愛映画で上映時間も把握済み。お涙頂戴の恋愛映画には興味がないけれど、コーラを買って、真ん中にキャラメルポップコーンを置いて。アミと一緒にいられるだけでよかったんだ。
グスッ、グスッ。
隣で鼻をすする音が聞こえる。
「アミ、どうぞ」
「うんっ、ありがとう」
ポケットティッシュと、アミがプレゼントしてくれたブランドのハンカチをさり気なく手渡す。僕の評価は上がったかな。
講義中に、女子が泣ける映画だって言ってたのを盗み聞きしていた。『そんなの、僕にはわからないな』とたかをくくって観ていたけれど、このお話は感動した。ワガママな彼女に振り回される主人公の視点で進んでいって、主人公のセリフは字幕だけで。そして彼女の結婚式。そこで主人公は女性だということが判明して、ここから声が入って。彼女が家庭を持って、子どもが生まれて、老いて病院で息を引き取るまで、告白することなく友達として見守り続けた、という内容だ。
『僕だったら』と、ふと考える。
気持ちを隠したまま側に居るなんて絶対無理。しばらく引きずるとは思うけれど、お互いにスッキリして、前を向いたほうがいいと思ったんだ。
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