遡上する鮭

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 楽しいデートなんてあっという間。最後は行きつけのラーメン屋さんで、僕は味噌ラーメン、アミは醤油ラーメンを頼んでシェアしておしまい。冬よりも日が照る時間が長くて遊びやすいけれど、アミの疲れが残らないように、十九時前に解散するのがお約束。  天井から聞こえるアミの足音で何をしているのか想像しつつ、シャワーを終えた後に連絡を取り合う。新鮮味が無くなるから電話は禁止。アミは二十一時就寝。  ”今何してるの?”  ”テレビ”  ”僕は部屋でボーっとしてる”  ”ふーん”  家族以外の人とストレスなく会話ができるって、実は、すっごいことじゃない?手のひらサイズの四角形がアミの体だと考えれば側に居るんだから、ちっとも寂しいことなんてない。  『どこまでも広がるネットの海で僕たちだけが赤い糸でつながっているんだね』     記憶の底にある漫画のセリフ。アミには言えないけれど、キザっぽくて気に入っている。  ”明日何時?”  話を終えたい時のアミの合図。僕は、社会人のアミのペースを邪魔しないよう、その言葉に答えるだけ。  ”九時。アミは?”  ”七時”  ”じゃあ、もう寝ないとね”  ”うん。ごめんね、おやすみ”  ”おやすみ”  「ずっと一緒にいたい」  その言葉を伝える資格はないから、独り言。  
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