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58年の明莉
「……ごほっ!」
明莉はむせて目が覚めた。
「あら、なににむせたの?」
お母さんがいた。
明莉のお母さんだ。
明莉はコタツに寝かされていた。
「あ……なんでもない。
夢見てた。」
「なになに、どんな夢?」
別の辺に座っていた妹が身を乗り出してきた。
「都会のおうちにおじゃました夢。
なんか、すごく進んでた。」
「ほんと? どんなふうに?」
明莉が話し出すと、お母さんもコタツに入って聞き始めた。
「うわー、すごいね!」
「ラクそうねえ。」
「お姉ちゃん、なんでそんなこと知ってたの?
雑誌で見たの?」
「うーん、わかんないけど、夢で見たってことは、なんかで読んだか見たかしたんだと思う。」
「夢は想像の世界でもあるから、明莉の願望かもよ?」
お母さんの一言に、明莉はちょっと黙った。
「それは……たぶん半分くらい違うと思うんだけど。」
明莉はそれ以上は言わずに、コタツの上のカゴから蜜柑を一つ取って食べ始めた。
昭和58年のことだった。
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