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「お兄ちゃん、最悪なんだけど!!」 高級マンションの最上階、結婚した真理姉が住む家に、大学が終わった後に大急ぎで向かいそう愚痴った。 カメラを片手に真理姉が料理を作る姿を撮っていくけれど、私が話しているのでここは編集でカットをする。 私が高校3年生、真理姉が23歳の歳に私は動画配信を始めた。 チャンネル名は『可愛くて美味しい私のまり姉』。 美容系動画だけれど、スキンケアやメイクや身体ケアだけではなく、真理姉が作る料理や真理姉の恋愛話、そして私達家族の団欒のシーンも入れている。 今では登録者数100万人を超えている人気動画配信者になっている私。 “可愛くて美味しい真理姉”をテーマに、真理姉の“リアル”を詰め込んだ動画。 私の大好きな、可愛くて美味しい真理姉。 お母さんには申し訳ないけれど、お母さんは“お父さん”みたいな存在で。 私にとっての“お母さん”は真理姉だった。 いつも一緒にいてくれて、優しくて温かくて・・・でも、私がしっかりしないといけないと思わせる。 他のどんなお母さんよりも可愛くて、美味しい物を作ってくれる私の真理姉は、私の“お母さん”でもあった。 そんな真理姉が、素顔のままの姿で料理をしながらクスクスと可愛く笑っている。 学校から帰りお母さんとキッチンで話す女の子のように、私は今日も真理姉と話す。 カメラを回しながら・・・。 このカメラの中に、現実の世界を入れていく・・・。 「理子は、豊のことが大好きだもんね・・・。 ありがとう・・・。」 真理姉が今日もそう言って、カメラを持つ私の方を見てくれた。
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