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「ただいま~!理子ー!!!」 しばらく編集をしていたら、お母さんの声が玄関から聞こえた。 そして、ノックもなく私の部屋のドアを開けてきて・・・ 「私の後輩に、オバサンとか言わない!!!」 と、めちゃくちゃ怒った顔で私の部屋に入ってきた。 そんなお母さんをチラッと見てから、私はまたパソコンの方を向く。 「ババアって言わなかっただけ、褒めてよ。」 「“ババア”だけは言わないでって小さな頃からお願いした甲斐があったね! ・・・じゃなくて、誰にでも噛み付かない!! あの子は凄く良い子だし、オバサンでもないし、理子が噛み付く所あった?」 「私のお兄ちゃんと並んで歩いてた!!」 「・・・なるほどですね。 もう二度と並んで歩かないよう、私から伝えておきます。 並んで歩かず、1メートルは距離を取るのはいかがでしょうか?」 そう言われ、少し考えて・・・ 「それならいいよ。」 そう答えたら・・・ 私の頭にポンッと手を置いてきた。 「ピンク色の鮫ちゃんは、今日も誰かに噛み付きましたか?」 「・・・大学でも少し。 あとは・・・昨日だけど、会社でオバサン達に噛み付いた。 だって、お兄ちゃんとのことで余計なお世話なこと言ってきたから。」 「明日もバイトでしょ? ちゃんと話してくるんだよ?」 「うん・・・。」 そう答えてから、泣いた・・・。 そんな私の頭を、お母さんはポンポンッと強めに叩いてきて・・・。 「現実世界は厳しいよね~!! 分かるよ~!お母さんもそうだから、分かるよ~!! ほんっとに厳しいんだよ!! でも・・・まだ生きてるからね!! 生きてる限りは、どうにかしてこの厳しい世界で生き延びよう!!」 「うん・・・。 私はただの鮫じゃなくて、ピンク色の鮫だから・・・。 だから・・・他の魚とは生きていけなくても仕方ないの・・・。 普通の鮫とも生きていけないくても仕方ないの・・・。」 小さな頃からお母さんに言われている言葉を自分でも言う。 「でも、まだ生きてるから・・・。 珍しいピンク色の鮫を悪い誰かに捕まえられてしまわないように、波を荒立てないで泳ぐの・・・。」 「そうだね。 そうすれば悪い誰かに見付からない。 捕まえられて、痛め付けられない。 でも・・・」 お母さんが言葉を切った・・・。 そして・・・ 「「守る為には、戦う。」」 お母さんと言葉が重なり、お母さんを見上げた。 お母さんは優しいだけではなく、強く惹き付けてくるような笑顔で私を見下ろす。 「ピンク色の鮫を普通の鮫にしようとしてくる奴なら、噛み付いてでもピンク色を守っておいで。」 そう、今日も言ってくれて・・・ 泣いた・・・。
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