51人が本棚に入れています
本棚に追加
2
「待たせてごめんな。待ち疲れただろ」
「…うん…」
カチャッと鍵を開けて、白い門扉を薫が開ける。
背中を軽く押されて中に入った。
薫が内側からまた鍵をかける。
そして薫はそのまま僕に手を伸ばして、ぎゅうっと抱きしめてくれた。
「…ちょっと、淋しかったよ?薫…」
ほんとは、すごく淋しかった。
12月の土日は全然会えなかった。去年まではもうちょっと会えてたと思う。
仕方ないって解ってる。
でも…。
「…うん。ごめん、裕那」
そう言った薫が、僕の背中をまたぽんぽんと叩いて、
「中入ろっか」
と言った。そして僕の肩を抱いて玄関へのアプローチを歩き始める。
朝比奈家の白く美しい洋館は、この時期クリスマスのイルミネーションで飾られている。今年はシャンパンゴールドのライトがキラキラと輝いていた。光るトナカイのオブジェが可愛い。
白いドアに映える緑とゴールドのリース。
そのドアを薫が開けて、中に誘われる。
玄関には大きなクリスマスツリー。
「今年も綺麗だねー。毎年のことだけど洋館にクリスマスツリーはホント似合う」
「でも本番の日はほとんど見られてないけどな。皆出かけてて」
ドアに鍵をかけた薫が、僕を後ろからぎゅっと抱きしめた。
「オレの部屋、行こっか」
「うん…」
身体の前に回された薫の大きな手に、手を添えた。
「裕那の手は冷たいな」
薫が僕の手を包むように握った。
あったかい
手を繋いで階段を上って、薫の部屋に入った。
いつものように薫が僕のコートを脱がしてくれようとした。
「あ」
「ん?」
プレゼント!忘れちゃうとこだった。
…薫の顔見たので舞い上がってた。
「あの…薫、メリークリスマス」
ポケットから小さい包みを取り出して薫の前に差し出した。
「うわ、ありがとう、裕那。なんだろ。開けていい?」
「うん。開けて開けて」
普段みんなで集まる大きなテーブルに移動して、薫が長い指で丁寧に包装紙を開けていく。
すっごい悩んで決めたプレゼント、気に入ってくれるかな?
「タイピン!ありがとう。明日から使うよ」
そう言った薫が僕をぎゅうっと抱きしめた。
銀色の、少し捻ったようなデザインの細身のネクタイピン。
薫はネクタイを締めることが多いから、と思って選んだ。
「オレもあるよ、プレゼント」
改めて僕のコートとマフラーをハンガーにかけてくれながら薫が言った。
そしてクローゼットの中から、綺麗な小振りの紙袋を出してきた。
「あ、でも半分プレゼントで半分プレゼントじゃないんだよなぁ」
「え?」
どういうこと?
最初のコメントを投稿しよう!