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「うん、まあ開けたら分かるから。メリークリスマス、裕那」  薫はそんな不思議なことを言いながら、僕にその紙袋を手渡してくれた。 「本当は紙袋からは出して渡すべきなんだろうけどね」 「ううん。この袋すごい綺麗だし、このままがいい」  深い紅色の地に、金色の雪の結晶のようなデザインで箔押しした紙袋。中を覗くと天鵞絨(びろうど)の包装紙に包まれた小さな箱が入っていた。  水色のリボンの箱と、紺色のリボンの箱。 「水色の方、出してごらん」  そう言われて、紙袋から水色のリボンのかかった方を取り出した。そしてその青みがかった緑色の包みを慎重に開けると、白い箱が出てきた。  白、っていうかパールって感じ。光沢がある上下に開く箱で、蓋がリボンで留まっている。  綺麗な箱…  そう思って、しばし見惚れた。 「開けてごらん、裕那」 「うん」  リボンをほどいて箱を開けると、水色のベルベットの小箱が入っていた。  これって…。  母の部屋でよく見かけるアクセサリーケース。  慎重に取り出して、ドキドキしながらカパっと開けた。 「わ…」    指輪…だ…  銀色の、2本がクロスしたようなデザイン。 「綺麗…」 「どう?裕那に似合いそうだと思ったんだけど」  薫が微笑みながら僕に問いかける。そして、箱に手を伸ばし、指輪をケースから取り出して僕の右手を取った。  わぁ…  薫が、僕の右の小指にスッと指輪を嵌めてくれた。 「よかった。サイズぴったりだ」  そう言った薫が、僕の小指にキスをした。  物語の王子様みたいだ。  僕はまだドキドキしながらその様子を見ていた。  薫に取られている僕の右手の小指にキラリと光る指輪。  あ! 「もう一つの箱…っ」  もしかして…  弾かれたように薫を見上げると、薫も僕を見ていた。 『半分プレゼントで、半分プレゼントじゃない』 「そう、もう一つはオレの分。でも、裕那がバレるのが怖いなら着けないよ」  優しい、でも少し淋しげな微笑みを浮かべて薫はそう言った。  僕は以前「怖い」と確かに言った。  でも… 「…こっちの箱も開けていい?」  薫を上目に見ながら訊くと、薫はその美しい瞳をわずかに見張った。  そして軽く頷く。  それを見て僕はもう一つの紺色のリボンの箱も開けた。  中には、薫が僕の指に嵌めてくれたのと同じデザインの、一回り大きい指輪。  僕はその指輪をそっと抜き取った。  
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