191人が本棚に入れています
本棚に追加
「こうやって若いのを構うから鬱陶しいがられてしまうんだな」
その言葉にスープを皿によそう手がとまった。それは自分以外にもしたということか。
「え、ライナー先生、誰かにやったの?」
揺れていた尻尾の動きが止まる。
「ん、まぁ、な」
すぐに思い浮かんだのはニコラだった。可愛い人の子だったから構いたくなるに違いない。
「そう。ライナー先生、俺はいいけれど他の子は駄目だよ。勘違いしちゃうから」
声が震えそうになりながらもなんとか言えた。
「そうだな。俺も嫌われたくはないから気を付けるよ」
その答えはさらにエメを傷つけた。
「うん、それがいいよ」
スープをよそいライナーの前へと置くと、
「ライナー先生、俺、朝食はいいや」
エプロンをはずして椅子に掛けた。
「エメ」
ライナーの手が腕をつかむ。こんな気持ちで一緒に食事は無理だ。そう思っていたのに、
「一緒に食べたいんだ」
そんなふうに言われたら気持ちが揺らぐ。
「美味しいものはエメと一緒がいい」
さらに追い打ちをかけられて、エメの心は簡単に傾いた。
そんなふうに言われたら嬉しい。それでも突っぱねる真似などエメにはできなかった。
「わかった。一緒に食べよう」
と口にしていた。
皿をとり自分の分をよそうと椅子に腰を下ろす。
「頂きます」
ふたりそろって手を合わせてスープを一口。野菜と肉が柔らかく、出汁がスープに溶け込んでいる。
「美味いな」
「うん。少し味が濃くなったからパンを浸して食べるといいよ」
「そうしよう」
パンをつけて食べると最高に美味しい。
「耳がピコピコと動いていいるぞ」
そう言われてエメは恥ずかしくて耳を抑えると、
「だが、そうなるくらい美味い」
ライナーは自分の耳をつまんで動かした。
「ふふ、一緒」
優しい目をして見ている。
最初のコメントを投稿しよう!