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揺れ動く心
距離をとるにも何から始めるべきなのか。それを考えるだけで憂鬱になる。何度もライナーの邪魔になっていないかと悩んだ。直接聞いたこともあったがその時はエメと過ごす時間が好きと言ってくれたので傍にいることにした。
「食事の用意はしたいよな。時間が不規則だから食事をとらないときもあるし。時間があるときに栄養のあるものをたべてほしい」
掃除でもそうだ。片付ける暇がないので定期的に見てあげたい。
そんなことを考えていると結局は離れることなどできないわけで、お昼にご飯を一緒に食べるのをやめるくらいしかできない。それも嫌だが距離を置くには我慢すべきだろう。
「俺、ライナー先生離れできるのかな」
思わず口に出てしまった言葉にため息をついたところに、
「そりゃ無理だろ」
独り言のつもりが返事がくるとは思わず、驚いてあたりを見渡すとジェラールが「よう」と手を挙げてあいさつをする。
「なんでいるの」
「ライナー先生に用があってその帰り」
診療所に用があるとしたら騎士団の誰かがけが人がでたか、保護した子供たちの診療を頼みに行ったかだろう。
ジェラールはよほどでないかぎり診療所へと足を運ぶことはしないのだから。
「ていうかさ、なんでライナー先生と離れようと思ったわけ?」
理由を聞き出そうと迫られてエメは一歩後ろに下がる。
「それよりもライナー先生に何の用事だったの?」
話すつもりがないので質問を質問で返した。
「ふ、そいつはライナー先生に聞きな。エメにも関係することだからさ」
素直に話さないのはエメが答えないからだろう。
「わかった。ライナー先生に聞くよ」
じゃあねと手を振りジェラールのそばを離れた。
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