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ギーとルネは朝から元気よくパン屋へとやってきた。楽しみすぎて目が覚めたのだと笑う。
「まずは仕事に慣れて貰うためにお会計と袋詰めをやってもらうね。算盤は使える?」
「はい。算盤が使えるかを求められることがあるからと、ピトルさんが教えに来てくれました」
ピトルとは獣人商売組合の組員で、エメのパン屋にもよく買いに来てくれる。
彼なら面倒見が良いので丁寧に教えてくれるだろう。
「パンの値段と種類を覚えるのが大変だけど、俺もそばにいるから」
「あの、お店が開くまでエメさんの作業を見ていてもいいでしょうか」
「もちろん」
パンを形成しているとき、ふたりはじっと見ている。
「エメさん、ジャムとか煮豆はいつ作っているんですか?」
「パンの発酵を待つ間に作ってるよ」
エメは一人でパンを作っているので手間のかかるパンは作らない。
楕円形のパンにジャムや甘い煮豆を挟んだものだったり、肉の塊を焼いてスライスしたものと野菜を挟んだものや、クリームパン、チョコレートでコーティングした丸い揚げパン、時間があれば菓子パンを数点作るくらいだ。
チョコレートは知り合いが作っているので仕入れているし、野菜もカットして持ってきてくれるのだ。
「みんな俺の祖父からの付き合いだからさ、良くしてもらっているんだよ」
それだけではない。店に来てくれる常連さんもいいひとばかりだ。どうしても手が離せないときにはゆっくりでいいよと言ってくれる。
「まわりの人に助けてもらってばかりだよ」
「俺、少しでもお役に立てるようにがんばります」
「俺も!」
なんとも頼もしいことを言ってくれる。
「ありがとう」
ふたりを抱きしめると照れくさそうにし耳がたれた。
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