あたたかな日差しに照らされて

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 人の行動力、判断力を奪い、眠気を誘ってしまうようなあたたかな日差しが降り注ぐ。時折木々の葉を揺らす穏やかな風が吹き、はらりと一枚の葉を落とす。  ブランコをこぐように左右に揺れながら舞い、“かさり”と音を立てて地面を鮮やかに彩っていく。  少し遠くの方で、子供の甲高い笑い声がする。地面を赤や黄色に染めている葉を抱え、空に向かって勢いよく舞い上げては、葉っぱの雨を浴びて笑顔を輝かせている。  とてもいい顔をしている。その瞬間を切り取ってあげたい。  そう思っても、自分は時間が止まってしまったかのように身動きが取れない。  きっと、このあたたかな日差しのせいだ。布団に包まれているような心地よさのせいで、頭の回転が鈍って動けなくなった。  紅葉が綺麗な公園のベンチで穏やかな時間が過ぎていく。私はいつまでここにいるのだろう。  葉が“かたり”と私の上に落ちた。  このままここに居れば、いずれは埋まってしまったりするのだろうか。  “かさり”  ほら、また近くに落ちた。もしこのまま動かなければ、いつかは本当に埋まってしまうかもしれない。  そうなったとしたら、誰か私を見つけてくれる人がいるのだろうか。葉をどけ、抱え起こしてくれるだろうか。  こんなことを考えるのも、きっとこのあたたかな日差しのせいだ。そう、全てはこの日差しのせい。
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