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――ケーキ、買ったよ! あ、冷蔵庫の中にシャンパン冷やしてるからね?
は? ちょっと待って? この状況でクリスマス会でも開こうとしてるの?
どれだけ鈍感なの? というか、開き直って謝る気も無くなったってこと!?
――駅前のスーパー、チキンが安くなってた! 照り焼きだけどいい? フライドチキン系がもう無くなってて。
駅まで帰ってきた、ってことは後十五分ほどで着くんじゃないの?
ど、どうしよう⁉
いや、気づきなよ?
あんなシーン見られて、私が何にも感じてない、とか思ってんじゃないの?
私だってそう思ってた、心が死んでるのかなって思ってた。
でも、このとんでもないポジティブメッセージの数々に、段々ムカついてるの。
そろそろ、ブロックしようかってほどイライラが募ってるの、なんでか読むの止められないけど。
次はどんなのが届くのよって、待ってる自分に気づき出した。
でも、なぜかその後のメッセージが止まる。
三十分経っても届かない。
あ、電池が死んだのか。
そう悟った瞬間。
着信画面には拓海の名前、電話が鳴ってる。
ビックリして一瞬手から落としかける。
どうしよう、どうしたらいい?
ああ、でも、この電話で伝えてしまおう。
玄関前の荷物を持って、とっとと立ち去れと一言で終わらせる。
スーッと深呼吸して、通話ボタンをタップした。
『サクラ! 外、見て? ベランダ出てきて』
「は?」
『ね、いいから』
「もうさ、いい加減に」
腹が立ちながらも、これが最後だとベランダに出て、見下ろしたらマンションの敷地内、さっき見た時よりも更に白く染まった景色の中で拓海が私を見上げて手を振っていた。
「ねえ、雪だるま作った」
三階からでも肉眼でわかるほど、嬉しそうに八重歯を覗かせて笑う拓海の横には、子供の背丈ほどの雪だるま。
なるほど、三十分の無言はこのためか、子供か‼
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