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「サクラ、あのね」
返事もせず、無表情で見下ろす私は、拓海の目にどう映ってるんだろう。
怖い年上の彼女? いや、もうただの都合のいい同居人だったのかもね。
「報告があります」
バンビちゃんのこと?
「来年春にデビューが決まりました」
「は? 聞いてない!!」
思わず大声で返事をしてしまってから、慌てて口を塞ぐ。
「うん、クリスマスに伝えたくて言ってなかった!」
なに、無邪気に笑ってんだ! そんな大事なこと、こんな日に言うなー‼
「で、ここからがもっと重要! テレビボードの下の引き出し、開けて?」
スマホを耳につけて、拓海が指示をするから私も真似して同じ形を取る。
デビュー以上に重要なことなんかない、もっと話が聞きたいのに。
少しのため息をマイク部分にこぼしながら、引き出しを開ける。
「開けたよ」
『手前にDVDがあると思うんだけど』
「ねえ、こういうのは立てて片づけてって、何度も」
横向きに置かれたDVDを手にして、その下に隠すように置かれていたものに気が付いた。
「なに、……これ」
『箱と封筒、開けて?』
震える手でリングケースらしき箱を開ける。
小さな石のついた銀色の指輪。
封筒の中身は、拓海の名前が記入してある……。
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