Marry Christmas

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 この広い都会の中、住んではいない街で偶然バッタリ出逢うなんて、まるで運命よね。  私は時が止まったかと思ったけれど、向こうは心臓が止まったような顔をしていた気がする。  横断歩道の真ん中で立ち止まってしまった彼を、十代にも見える愛らしい彼女は、バンビのような大きな瞳で見上げて。 「どしたの? たっくん?」  たっくん、たっくんだって、たっくん。  彼の横を通り過ぎた瞬間に、笑いがこぼれた。  拓海(たくみ)だから、たっくんか、かーわいい。  信号を渡りきりクルリと振り向くと。  彼女に引っ張られるようにして向こう側に辿り着いた「たっくん」こと拓海が、何か言いたげに私を見ている。  私はそれを無表情のまま、一瞥(いちべつ)して背を向けた。  うそつき。  歩きだした私は少しずつその速度を増して、しまいには駆け出していた。  付き合ってから三年の間、彼に女の影が無かったわけじゃない。  モテるのは知っていたし、一方的に女の子の方から言い寄られていた。  その度に、自信を無くしてもう別れよう、って言い合いになって。  最後にそんなケンカをしたのは一年前だったかな。  そういえば、あの誓約書、どこにあったかな? 無くしちゃったかも。
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