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三年前も真っ白に染まったクリスマス。
駅前のクリスマスツリーの下、待ち合わせの場所に現れた拓海は、鼻も手も真っ赤だった。
ついさっきまで、外でケーキを売っていたんだとか。
小さいケーキの箱を抱え「メリークリスマス! 片瀬さん」と、嬉しそうに笑う彼の頭に、積もった雪を背伸びして振り払う。
「左手に、はめて。で、ケーキ、貸して」
自分の左手にはめていた手袋を渡して、右手でケーキの箱を持ち彼の右側に立つ。
野添くんは、頷きながら渡した手袋を左手にはめてから、空いている右手を私に差し出す。
「めっちゃ冷たいじゃん」
その冷えきった手を温めるように握り返し「メリークリスマス、野添くん」と笑いかけたら。
今まで見たことないくらい、優しい目をして。
「今、もっと片瀬さんの温もりが欲しくなったんっすけど」
繫いだ手を引かれて、飛び込んだ拓海の胸の中、思いきり抱きしめられた。
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