「涙、さきまわり」2

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「涙、さきまわり」2

 俺の今までの振る舞いからして、普通の友人としてしか付き合ってこなかったと思うんだけど。  だって、行動から言動から何から何まで全てにおいて、細心の注意を払って、違和感を抱かせないように心を砕いて、最近じゃ無表情に無感情がデフォになってたくらいだ。  そんな状態の俺を見ていて、自分のこと好きじゃんって良くも言えたもんだな、と逆に感心してしまう。  もしかして、好きだから照れてるだけ、そっけないのは恥ずかしがってる、だなんて思ってたのか。  どんだけ自信あるわけ、羨ましいよいっそ、そのプラス思考。  しかし、残念ながらどれだけ心の中で貶めようとバカにしようとあるわけないと冗談だろうと予防線を張ろうと、俺が朔也を好きなのは事実でしかない。  どうしてこんなパッパラパーであっけらかんとひっでえ真似して来たやつのことがこんなに好きなんだろうな、俺ってマゾなの、嫌なんだけど。  だってそうだろ。  俺が朔也のことが好きだって気がついてるのに、遊び惚けて、女との惚気話を平気でして来てたわけだし。  なんなら俺を合コンに誘うし、彼女への誕プレ選びに付き合わされたことだってあるし、別れたら捨てられた子犬ヅラして電話寄越すし、寂しいから家に泊まりに来てだの遊び行こうだの。  忙しいやつなんだよ、朔也ってやつは。  一応は俺だってモテねえわけじゃねえのに、お陰様でこっちは彼女作ってる暇なんてなかったわけだ。  え。なんだこれ。マジでこいつ、死、あるのみなんじゃねえの。
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