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「涙、さきまわり」3
俺たちは確かに幼馴染で長い時間を一緒に過ごして来たけれど、好きだなんて言ったことはなかったし、なんなら俺も気持ちを自覚したのは15歳くらいの時だった気がする。
つまりは高3の冬である今、俺の片思いもピッタリ3年と言うことになる。
背も高いし短くまとめられた艶のある黒髪は、ヤンチャな中身を表すようにくしゃっと雑だけどらしくセットされている。
キレやすいけど、友人は大切にするし、基本的にはお調子者で人懐っこい性格をしてるから、周囲から好かれる。
鍛えるのも食うのも面倒で放置した末、華奢なまま成長した体に顔色も悪い、猫っ毛の癖に脱色していて、頭ふわふわに見える俺よりは学ランが似合う。
二人でいると、見た目取り換えた方がいい、なんてよく言われるのが俺たちだった。
しっかし、なんで好きとか知ってんの、わかったの、いやまだ決まってない、カマかけられてるだけの可能性がある。
「どうしてそう思うんだよ?」
「わかるって!」
「マジでどうしてなのか答えろってば」
朔也は、だってさあ、だとか、それにーだとか、色々と俺の朔也への接し方を例に挙げて説明してくる。
しかし、始終ヘラヘラとしているので、説得力は皆無だった。
ともかく、それって全部普通のことじゃねーの?って思えるものがほとんどで、一切俺が眉間に寄せた皺をゆるめないことに気がつくと、朔也は「これは?」と、まあまあ言われてみればそうなのか?くらいの、多少は危うい話も出してきた。
それでも友人同士の域は出ないな、と判断出来なくもない、どっち付かずなエピソードだ。
「何より、他のやつと俺じゃ、琉生は対応が違うじゃん」
「…親友だし。決め手に欠けるな」
「決め手があれば認めるの?」
「…煙草、ちょーだい」
返答をぼかした俺に、朔也は気にした風もなく煙草を取り出すと百円ライターと共に差し出してくる。
受け取って1本咥えて火をつけると、浅く吸って紫煙を吐き出して、夕暮れの終わった空を見上げる。
そんなに俺、おまえのことばっか優先してた?
友人だったら当然、の範疇は超えてなかったと思うんだけど。
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