①岸野side

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①岸野side

僕の隣で、快活に笑う彼。 同じものを見て同じ時間を共有していても、 同じことを感じているとは限らないんだ。 「お前のことが、もっと知りたい」 たとえそう言われたとしても、 本当に僕と同じ思いを抱いているのか、 確信を持てる訳がなくて。 だから、あと一歩のところで踏み出せない。 本当の気持ちは、いつも言いだせないまま。 ずっと憧れていて、恋焦がれていて、 触れたいと思っていて、 好きだって言いたくても。 いつから、こんな思いを 抱くようになったんだろう。 今の関係を築くまでは、 単なる知り合いのひとりだった。 駆け出し俳優としてオーディションを 受け続けていた僕は、ある日事務所に 彼とコンビを組んで歌を出しませんかと 打診され、あっという間に人気者になれた。 彼は自分で仕切らないと済まない性格で、 周りにたくさんの人をはべらせていて、 縁あってそこから抜きん出ることができた 僕は、多くの時間を共有しているけど。 彼が僕と離れたらどんな交友関係を築いて、 どんなところで過ごしているのか、 実はあまりよく知らない。 僕は僕でそういう一面を持っているから、 彼をとやかく言う事はできないけど。 本音を言えば、もっと気にかけて欲しい。 もし僕が「もう仕事したくない!」って ストライキを起こしたら、どうするつもり?
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