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難しい問題②
授業が始まってしまったのです、どうしましょう…。
でもきっと大丈夫。なんといっても私の隣の席には、あの存在感のあるゼブラス・ジャスビオ様なのですから。
と思っていたのに…。
どうしたことでしょう。確かに先生は私を指名したようなのです。
「ラズリ君。この問題を、前に来て、黒板で解いて」
どうやら聞き間違いではないようなのです。
先生、一体どうされたのでしょう?
ああ、ひとつ前の問題でしたら解けましたのに、非常に残念です。
仕方ありません。私には解けなかったのですから、素直に分かりませんと言うしかないのです。
「ラズリ君? 」
ふうとため息をついてから
「その問題についてはわかりません」
と言おうとしたら…
私の手元にすっとノートが差し出され、その問題の回答の式が細かく書いてあったのです。
ノートを差しだしたのは、なんとお隣の席のゼブラス様!
まあ、なんと粋なことをなさるのでしょう。
「ラズリ君」
「は、はい」
私は、そのノートを手に取ると、黒板へと向かったのです。そしてノートから黒板へと写しているうちに、その問題がこのように解けるのだということが、分かっていったのです。
「正解! 難しいのによく解いた。素晴らしい」
先生が褒めてくださいました。でも、解いたのは私ではないのでフクザツなのです。
席に戻ると、ゼブラス様にノートをお返しして小さな声で言いました。
「ありがとうございました…」
その授業が終わると、今日はもう下校の時間なのです。ゼブラス様には先ほどのお礼を、もう一度きちんと言うべきですね。
「あの…、ゼブラス様、先ほどは…」
と言ったところで、またまたゼブラス様の席に、ご友人たちが集まってきたのです。
特にセドニクス・カルーセド様は、ゼブラス様のお父様が騎士団長をされている騎士団に憧れてらっしゃるらしく、よくそのお話をしているようなのです。
「今日の授業、難しかったな。ちょっと聞きたいところがあるんだけど」
勉強のことでもゼブラス様は、セドニクス様に頼られているところがあるようなのです。
「ああ、俺も」
「僕にも」
他の方々もやってきたので、お邪魔にならないうちに、とっとと帰ることにするのです。
「おい、ちょっと待て…」
とゼブラス様の声が聞こえたようだったのですが、きっと私に対してではないですね。
ん? 前にもこんなことがあったような?
まあ、いいのです。お礼はまたあらためてすればいいことなのです。
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