32人が本棚に入れています
本棚に追加
席替えなのです
と、思いましたら、次の日、学校へ来てみると、なんだか教室が騒がしいのです。
そういえば、今日は席替えをすることになっていたのです。登校したらくじを引いて、新しい席につくのです。
私は、お隣だったゼブラス様とは離れた席になってしまいましたので、お礼を言いづらくなったのです。困りましたね。
ところが、なんとフロラス様が、私のふたつほど前の席になり近くなったのです。これは、ヴィオレーヌ様に頼まれたことを、やりやすくなったのです。
そしてさらになんと、フロラス様のお隣は、イアロフェン様なのです。おふたりはよく楽しくお話しされているようで、またちょっとチェシー様たちのことが心配ではありますね。
さて、お昼を告げるチャイムが鳴りました。
フロレス様は、お弁当と思われる袋を持って立ち上がったのです。私はすかさず後を追いました。
「あのっ、フロラス様…」
フロラス様は私の声にで、こちらを振り向きました。
「あの、よろしかったら、今度でいいので、お昼を外でご一緒しませんか? 」
突然の誘いに、フロラス様は、きょとんとしているのです。それはそうですよね…。
「ええ…、いいですけど…。すみませんが、どなたでしたでしょうか? 」
えっ…。たしか前にもテラスで話して、名乗ったはずでしたのに…、忘れられてる? さすが影の薄い私ならでは、なのです…。
「あ、あの、私、同じクラスの、ルビセル・ラズリと申します。確か、以前にもランチテラスでお話ししたのですけど…? 」
「…あ、そういえば、そうでしたね。ごめんなさい。えーと、それで、私に何か? 」
「あのですね、今度一緒に、外でランチを召し上がりませんか? 私もいつも、フロレス様と同じお弁当ですので」
「…ああ、ええまあ、いいですよ」
「まあ、よかった。では、明日はいかが? それで私のお友達もひとり、ご一緒させていただいていいでしょうか?」
「あ、はい。ひとりくらいなら…」
「ありがとうございます。では明日」
ああ、よかった。ヴィオレーヌ様にもあとでお知らせしないとなのです。とりあえず、お昼を食べてしまいましょう。
「イアロ、最近どうなんだ? フロラス嬢のことは」
ある日のお昼休み、学年のサロンでお茶を飲みながら、ゼブラス様はイアロフェン様にお聞きになったのです。
「ああ、ヴィオレーヌに、フロラス嬢のことを気にかけてやってくれと頼んでみたよ」
「そうか。ステアが言ってた歓迎パーティーでのことは、けっこう大変だったみたいだしな」
「僕が、なんだって? 」
「ステア。今日はもういいのか? 」
「ああ。喉が渇いた。すまないが、お茶を一杯」
ステア様はサロンの執事に申しつけたのです。
「歓迎パーティーでのフロラス嬢のことだよ。ステアが教えてくれたから、ヴィオレーヌと話をしてみたんだ」
「ああ、あの時の…」
するとステア様は、ちょっと面白そうに微笑まれたのです。
「どうした、ステア? 」
「いや、なんでもない。ちょっと思い出して」
「何を?」
「いや、いいんだ。それでフロラス嬢のことは? 」
「ああ、今度ヴィオレーヌが、フロラス嬢と昼食を一緒にとってくれるそうだ。ふたりが一緒にいるような仲だとなれば、周りの態度も変わるんじゃないかな」
「そうか。うまくいくといいな」
最初のコメントを投稿しよう!