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仲良くお昼を
「私、シェフにお弁当を作ってもらったのです。よろしかったら、どうぞ」
そしてある日のお昼休み、私はヴィオレーヌ様とフロラス様と一緒に、いつもの場所でお弁当を食べることになったのです。
「ヴィオレーヌ様のお弁当、とても豪華でおいしそうですね…」
ひとり分には少し大きいバスケットの中には、野菜やハム、チーズにフルーツなどの各種サンドイッチに唐揚げ、卵焼き、デザートのコンポートまでが詰め込まれていたのです。
「お友達と一緒に食べるから、多めに用意してくれるように、シェフに頼んだのですわ。フロラス様、よろしかったら召し上がってね。あ、ルビーも」
それにひきかえ、私とフロラス様のお弁当のさみしいこと…。ヴィオレーヌ様のはりきりように、フロラス様もちょっと引いているように見えたのです。
「ありがとうございます、ヴィオレーヌ様。あ、これ美味しそうですね。ですよね、フロラス様」
「ええ…」
気を遣うのも大変なのです。せっかくのお昼なのに…。
唯一の救いは、しばらくすると、またあのピアノの音が聞こえてきてくれたことです。今日はいつもの、あの曲なのです。
「そういえば、フロラス様は、寮に入ってらっしゃるんですよね。お弁当はご自分で作ってらっしゃるんですか?」
ちょっと話題をそらすことにしたのです。
「いえ、寮の管理人さんやシェフの方がいるので、お弁当を希望すれば、作っておいてもらえるんです。それに学園の食堂でも、テイクアウトができますし」
「まあ、そうなのね。ところで、フロラス様はお料理はなさるの? 」
「寮に入ってからはしてないですけど、家にいたときは、親が働いていたので、私が料理をすることもありました」
「あら、そう…。…えっと、ルビーも、お料理をするのよね。お弁当も作ってるのよね」
「あ、は、はい」
「へえ。ご令嬢なのに、料理するんですか」
「はい。私、料理は好きなんです」
「ルビーはね、このあいだキャラメルを作って、持ってきてくれたのよ」
「キャラメル? 」
「はい。今日も持ってきてますので、フロレス様もどうぞ」
今日は、うちのシェフのアイデアで、紅茶風味のキャラメルを作って、持ってきていたのです。
「ありがとうございます…」
お昼を食べ終わっていたフロラス様は、それをぱくっと口に入れました。
「…おいしい」
「まあ、ほんと? ルビー、私も頂けないかしら? 」
「はい、もちろんです。ヴィオレーヌ様」
ヴィオレーヌ様もぱくっと口に入れました。
「本当! おいしい! 紅茶の風味がして、とてもおいしいわ。ねえ、ルビー、私にぜひ、キャラメルの作り方を教えてくださらない? 」
「えっ」
「もらったキャラメルをイアロ様に差し上げたら、とても気に入ったと話したでしょう? だから、私もイアロ様に作ってさしあげたいと思ったの」
「あ…、私も、作りたい。弟たちに…」
まあ、フロラス様には弟さんがいらっしゃるのですね。って問題はそこではないのです。
「ねえ、お願い。ルビー」
フロラス様も、期待するような目でこちらを見ているのです…。
「わ、わかりました…」
「わあ、ありがとう、ルビー! 」
というわけでお休みの日に、なぜかおふたりを我が家に招いて、キャラメル講座をすることになったのです。
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