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意外な事実
「そろそろだと思っていたのよ」
さすがの鋭い読みなのです、ロズベル姉さま。
「どうぞ。こちらの皿が私で、こちらがルビセル様です」
フロラス様がさっと、キャラメルが入ったお皿を差しだしたのです。
「包み方ごとに、味の種類も違うんですよ」
「まあ、本当? じゃあ1種類ずついただこうかしら」
「ええ、どうぞ。ほら、ヴィオレーヌ様も」
フロラス様につっつかれて、ヴィオレーヌ様もご自分のお皿を持って…。
「…欲しければ、差し上げてもよろしくてよ」
と、ジェデイド様に仰ったのです。
するとジェデイド様はふっと微笑まれて言ったのです。
「ありがとう」
「僕の好みからいうと、この白いキャラメルが一番かな」
「それは生クリームやハチミツも混ぜてあるの」
「ああ、だから甘さが深いんだね」
「そういえば小さいころから、甘いものがお好きだったわね。ジェドは」
「懐かしいね。その呼ばれ方」
「…このほうが、話しやすいですから」
木陰のベンチに腰掛けて、お話しているおふたりを、私たちは離れたテーブルからそっと見ていたのです。
「何なのかしらね。あのふたりは…」
ロズベル姉さまが、少し冷めた声で仰いました。
「まあ、いいんじゃないですか? 」
フロラス様は楽しそうに微笑んでおられます。
「ところで、ヴィオレーヌ様って、イアロフェン様の婚約者じゃないんでしょうか? 」
「えっ? フロラス様、どうして? 」
「だってさっき、ヴィオレーヌ様、自分がイアロフェン様の“婚約者候補”になってから、って言ってましたよね」
「そうよ。ヴィオレーヌ様はまだ、正式にイアロフェン様の婚約者ではないのよ」
「そうなんですか! お姉さま」
「ただ、候補者のなかで家柄とか能力とかで、ヴィオレーヌ様が一番と言われていることから、すでに婚約者で
あると皆が思ってしまったみたいね」
「正式な婚約者ではなかったのですね…」
「そうなのよ。実は私もルビーも、年齢からいって、イアロフェン様の婚約者候補に挙げられてるのよ」
「ええっ、そうなんですか? 」
「知らなかったの? 5、6年前くらいに、一緒にお父様に呼ばれて、そう言われたでしょう? 」
「…そういえば、何か言われたような気がしますが、よく覚えておりません…」
「ルビセル様らしいですね。でも、ヴィオレーヌさまは、イアロフェン様と仲いいですよね」
「そうみたいね。おふたりとも、一番の婚約者候補であることで、親しくなろうとしてるみたい。実際おふたりは気も合うようだしね」
そうだったのですね。キャラメル講座をきっかけに、意外な事実がわかってしまったのです。
「イアロフェン様といえば、フロラス様も仲がよろしいように見えますが? 」
「え…、そう? 私、なかなか友達ができなくて、最初となりの席になったステア様に、勉強のことを聞いたりしているうちに、ステア様のお友達のイアロフェン様やゼブラス様とも、話すようになったの。なんというか、気が合うっていう感じで…」
なるほど、気が合うのですね。
「また、チェシー様たちに、何か言われたりしませんか? 」
「最近は、イアロフェン様たちが、目の届くところにいてれるようにしてくれてるから、大丈夫。それに、誰かに何か言われることを気にして、つき合いたい人とつきあわないなんて、おかしいでしょう」
「うんうん。その通りだわ」
ロズベル姉さまもうなずきました。私も、そう思うのです。
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