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いよいよ灯夜祭
灯夜祭当日、本来、休日でお休みのはずの学園は、灯夜祭のために1日開放してあるのです。
学園の広間には、みんなが願いごとをするための大きめのロウソクが灯され、その周りには学生たちがロウソクを置いていくための段が備えつけてあります。
ロウソクが増えていくと、まるでクリスマスツリーのように、ロウソクの火が重なって輝き、とても綺麗なのです。
学園の門や、校舎の入り口から広間までの回廊、それぞれの学年のサロンにも、ロウソクが飾られて、いつもの雰囲気が一変します。
さて、そろそろ時間なのです。
私はロウソクを持って、ステア様との待ち合わせ時間よりも、だいぶ早めに屋敷を出たのです。
それは、まずは図書室と教室に行くためなのです。
街のあちこちにもロウソクの火が灯り、とても幻想的なのです。
学園につくと、すでに人がたくさん来ていました。
みなさんそれぞれ、ご自分のロウソクをお持ちになっているのです。
図書室へ向かう廊下は、灯夜祭の会場からはずれているため、薄暗く人も少ないのです。
図書室へ近づいていくと、扉の前に…。
ゼブラス様がいらっしゃいました。
ゼブラス様は私に気づくと、扉にもたれていた体を起こし、私に近づいてきたのです。
「あ…、来てくれたんだ…。俺、てっきり…」
「ゼブラス様、ごめんなさい! 」
私は、がばっと頭を下げて言いました。
「今日は、謝るために参りました。実は、私、ステア様をお誘いしたのです」
「えっ、ステア? 」
「はい。ステア様が来てくださるかはわかりませんが…。でも、ゼブラス様には、ちゃんと私の気持ちをお伝えしなければと思ったのです」
「…」
「今までのこと、いろいろと感謝しております。そして…ごめんなさい」
ゼブラス様は、はあぁ~、っとため息をおつきになったのです。
「ステアかあ…。そっか…」
「…」
ゼブラス様は、もう一度、大きく息を吐くと仰いました。
「わかったよ…。それならもう行ってくれ。ステア、待ってるんだろ? 」
「あ、いえ…。お誘いしただけで、来てくださるかは…」
「そっか。ルビーも“待ち”ってことか…」
「はい」
「来るといいな、なんて、今の俺には言えないな。もういいって、行ってくれ」
「ゼブラス様…。失礼いたします」
私はもう一度頭を下げて、そこから立ち去ったのです。
次は、教室へ参ります。
教室からは、ロウソクの灯りに揺れる広間と、そこへ続く光が灯された回廊が見えました。
そのロウソクの光を、イアロフェン様は窓から眺めていらっしゃいました。
「…イアロフェン様」
声をおかけすると、イアロフェン様はぱっと振り返ったのです。
「ルビー、来てくれたんだ…。私は、てっきり…」
「イアロフェン様、ごめんなさい! 」
私は、がばっと頭を下げて言いました。
「今日は、謝るために参りました。実は、私、ステア様をお誘いしたのです」
「えっ、ステア? 」
「はい。ステア様が来てくださるかはわかりませんが…。でも、イアロフェン様には、ちゃんと私の気持ちをお伝えしなければと思ったのです」
「…」
「今までのこと、いろいろと感謝しております。そして…ごめんなさい」
イアロフェン様も、ゼブラス様と同じように、はあぁ~、っとため息をおつきになったのです。
「ステアか…。そうか…」
「…」
「わかったよ…。もう行っていいよ。ステア、待ってるんだろ? 」
「あ、いえ…。お誘いしただけで、来てくださるかは…」
「そうか。来るといいね、なんて言うのは、ちょっとつらいな」
「ごめんなさい、イアロフェン様。失礼します」
私はもう一度頭を下げて立ち去り、いよいよ音楽室へ向かったのです。
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