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教室での出来事
教室に戻り授業の準備をしていると、何やらクラスメートたちの視線を感じます。
実は、その視線は私ではなく、私の隣の席の、ゼブラス・ジャスピオ様に向けられているのです。
短くスッキリとした赤茶色の髪は、活発なゼブラス様によく似あっているのです。
お顔立ちも凛々しく、確かに見ずにはいられないような容貌です。一度見たら忘れられない強い印象をお持ちで、私とは真反対なのです。
よりによってそのような目立つオーラの方の隣なんて…。
地味で脇役専門の私には、ちょっと居心地悪いのです。
でも、そのために良いこともあるのです。というのも…。
「では、この問題。誰かに答えてもらおう」
先生のこの言葉に、クラス中がさっと身を固くします。
私も、分かる問題であれば良いのですけれど、分からない場合は…。
どうか当たりませんようにと、祈れば祈る時ほど、当てられてしまうものなのですよね。
ところが、隣の席のゼブラス様のオーラが強いせいか、なぜかいつも、ゼブラス様が当てられることが多いのです。
「…それじゃあ、ジャスピオ君、どうかな? 」
ほらね! 今回も、影の薄い私は、当てられずにすみました! ゼブラス様、ブラボーなのです。
「ゼブラス様、さすがですね」
「あの難しい問題を解けるなんて」
「よろしければ解き方を教えて頂けませんか? 」
授業が終わるとこのように、ゼブラス様の周りに人が集まってくるのです。
高貴な王太子イアロフェン様や、クールなステア様に比べ、ゼブラス様は大らかで親しみやすいお人柄。それでいつも、こうなのです。
人がぎゅうぎゅう集まってくるので、私はいつも放課後、急いで支度をして、席を離れなければならないのです。さあ、カバンを持って、教室をでましょう。
…っと。
押し寄せてきた人波に押されて、カバンを落としてしまいました。あらあら…。
拾おうとして手を伸ばすと、そのカバンをさっと拾ってくださった方がいたのです。
「大丈夫? 」
「あ、ありがとうございます」
顔をあげると、それはなんとステア様でした。
え? 影の薄い私のカバンを認識してくださった?
と思ったのもつかの間、またまた人に押されて、私は廊下へと押し出される形になったのです。
はあ、ゼブラス様はすごい人気なのですね。
ステア様に、もっとちゃんとお礼を言ったほうがよかったのでしょうか?
まあでも一応、言いましたからね。よしとしましょう。
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