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キャラメルの続き
「よし、帰ろうぜ」
その日の放課後、ゼブラス様はイアロフェン様とステア様に、声をかけられたのです。
「ん? イアロ、お前、何食べてんだ? 」
「キャラメルだよ。ヴィオレーヌにもらったんだ」
「キャラメル? 俺も今日もらったぞ」
「ヴィオレーヌから? 」
「いや。隣の席のやつから」
するとステア様が尋ねられたのです。
「誰? 」
「えッと…。名前、なんだったかな。覚えてねーな。昼前の授業のとき腹がつい鳴ったらくれたんだよ」
「へえ、偶然だね。ヴィオレーヌも人からもらったって言ってたよ」
イアロフェン様は口をもごもごさせながら答えたのです。
「イアロ、うまい? 」
「ああ、ステア。うまいよ」
「そうか…」
「ステアも食べたかったか? 悪い、これが最後の1個だった 」
「いや、僕は…」
ステア様はふっと微笑んで言いました。
「いいよ。大丈夫」
「そうか? あ、じゃあ私はこれで」
門のところに、イアロフェン様のお迎えの馬車が来ているのです。
「おう。またな」
「じゃあな」
イアロフェン様もご挨拶して馬車に乗りこんだのです。
馬車のなかにはイアロフェン様のお付きの、ルフィーク・サダルスト様。
代々、王族の側近を務めている家柄の方なのです。
「イアロフェン様、お帰りなさいませ。…ところで、お口に何か? 」
「いや、別になにも…」
ルフィーク様は、じっとイアロフェン様を見つめたのです。
イアロフェン様は、ふうとため息をついて仰いました。
「キャラメルだよ…。ヴィオレーヌにもらったんだ…」
「おや、ヴィオレーヌ様から…。そうですが。しかし口に物を入れたまま歩いたりというのは…」
「ああ、わかったよ。これからは気をつける、…ようにする」
「ようにする…? 」
「気をつける! これでいいだろう」
「はい。まあ、ですが、勉強なさっていると、脳が甘いものを欲しがると言いますからね」
「そうだろ? またもらったらルフィークにもあげよう 」
「いえ、私は…。イアロフェン様がくださると仰るなら、いただきます…」
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