水面。

1/13
前へ
/13ページ
次へ

水面。

何となく、海沿いを歩いていた。 淡々とすぎて行く日常に区切りをつけたかった。 煙草を吸うのと同じだ。 煙に巻かれた時間で、同じことを五分。 それだけで心が晴れた。ほんの少しでも。 何となく本数が増えた。 気づけば月の出費は九万を超えた。 煙草を吸っている時間は、なにも考えなくて良かった。 解放された時間だった。 何となく繰り返し生きていた。 特別なことなどなにもないまま、日々老いていくのは自分だけ。 情報社会なんだ。 いついかなる時も、聞きたくないこと見たくもないことも脳内に刻まれて行く。 蓄積されて行く。 テレパシーとほぼ同義なんじゃないか。 世間に怯えている。 また今年も夏が来た。 何かが始まるようで、なにをしても許されそうで。 気づけば終えてしまう夏に、ひどく恋焦がれていたのに、いざとなると終わって行くことへの焦燥感がすごい。 夏が来る準備もできていない。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加