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「サリア様、よく聞いて!クラウス殿下は、何かの毒物を飲まされたんだと思う」
「毒物…!?」
光玉と一緒に、王宮に向かって走りながら、フィオナはサリアに語り掛ける。
「そう。だからサリア様、今から私が言う浄化の呪文を使って、殿下を解毒して!」
倒れ込んでしまったクラウスの傍らで、サリアは光玉からの声に、息を呑んだ。
「…そんな、高度な魔法…私には、無理よ…!」
「サリア様、解毒は時間との戦いなの!私が到着してからじゃ間に合わない!」
サリアは、苦しそうに顔を歪ませるクラウスを見やる。荒々しい呼吸は、だんだんと弱ってきているようだった。
「学園で先生に散々言われたでしょう!『魔法は持てる魔力に比例し、同時に想いの強さの二乗に比例する』って!!」
フィオナも息を切らしながら、必死にサリアを説得する。
「殿下を助けられるのはサリア様しかいない!サリア様より殿下を想っている人なんて、他に居ないもの!!」
フィオナの言葉に、サリアは目を閉じ、震える両手を、ぎゅっと握り締めて。
「…分かったわ。呪文を、教えてちょうだい…!」
しっかりと目を見開き、両手をクラウスの身体の上にかざす。
胸を突き破るような鼓動を必死に抑え込みながら、意識を集中する。そして、フィオナから伝えられた呪文を、高らかに唱えた。
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