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それにしてもクラウスは、一体どういうつもりなのだろうか。婚約破棄をしてきたのは他ならぬクラウスなのに、今頃になってもう一度婚約してほしいだなんて。
(…サリア様は、あんなにクラウス殿下のことを想っているのに)
クラウスが処分を受けるとなれば、今回の一件は当然サリアの耳にも入るだろう。サリアの胸の内を思うと、フィオナはいたたまれなかった。
そんなことを考えていると、傍らで寛いでいたウォルナットがふと顔を上げる。
次の瞬間、玄関の扉が勢いよく開いた。
「やっほー、フィオちゃん!」
「リゼルちゃん…!?」
リゼルの姿を見るなり、フィオナは目を丸くする。
漆黒の銃士服に身を包んだリゼルは、肩にライフルを担ぎ、右太もものガンホルダーには小型拳銃を装備していた。
無論、どちらもリゼル自作の魔法武器だ。
「もーっ、鍵開けっ放しじゃダメじゃん!フィオちゃん、クラウスから狙われてるんでしょ!?」
「り、リゼルちゃん、どうしたの?その格好…」
呆然とするフィオナの前で、リゼルは誇らしげにポーズを決めると。
「見ての通り、フィオちゃんの護衛に来たんだよ!今日はエー兄の代わりに、私がフィオちゃんを守ってあげるからね!」
「で、でもリゼルちゃん、学校は?」
今日は月曜日。普段ならリゼルも学校で授業を受けている時間だ。
フィオナに聞かれて、リゼルはライフルを肩から下ろすと、唐突に不機嫌そうな顔をした。
「だって、帰れって言われたんだもん。今日1日謹慎処分だって」
「謹慎処分!?どうして!?」
フィオナが驚いて聞き返す。リゼルは溜息を吐きながら、ダイニングの椅子に乱暴に腰かけた。
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