12.事件

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それにしてもクラウスは、一体どういうつもりなのだろうか。婚約破棄をしてきたのは他ならぬクラウスなのに、今頃になってもう一度婚約してほしいだなんて。 (…サリア様は、あんなにクラウス殿下のことを想っているのに) クラウスが処分を受けるとなれば、今回の一件は当然サリアの耳にも入るだろう。サリアの胸の内を思うと、フィオナはいたたまれなかった。 そんなことを考えていると、傍らで寛いでいたウォルナットがふと顔を上げる。 次の瞬間、玄関の扉が勢いよく開いた。 「やっほー、フィオちゃん!」 「リゼルちゃん…!?」 リゼルの姿を見るなり、フィオナは目を丸くする。 漆黒の銃士服に身を包んだリゼルは、肩にライフルを担ぎ、右太もものガンホルダーには小型拳銃を装備していた。 無論、どちらもリゼル自作の魔法武器だ。 「もーっ、鍵開けっ放しじゃダメじゃん!フィオちゃん、クラウスから狙われてるんでしょ!?」 「り、リゼルちゃん、どうしたの?その格好…」 呆然とするフィオナの前で、リゼルは誇らしげにポーズを決めると。 「見ての通り、フィオちゃんの護衛に来たんだよ!今日はエー兄の代わりに、私がフィオちゃんを守ってあげるからね!」 「で、でもリゼルちゃん、学校は?」 今日は月曜日。普段ならリゼルも学校で授業を受けている時間だ。 フィオナに聞かれて、リゼルはライフルを肩から下ろすと、唐突に不機嫌そうな顔をした。 「だって、帰れって言われたんだもん。今日1日謹慎処分だって」 「謹慎処分!?どうして!?」 フィオナが驚いて聞き返す。リゼルは溜息を吐きながら、ダイニングの椅子に乱暴に腰かけた。
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